エゴイストよ、赦せ
その日は、仕事がいつもより早く終わり、始発の電車で帰ることができた。
二度目の乗換駅で、その駅からの始発電車に乗り込みシートに座ると、僕は身体を丸めて寒さを和らげようとした。
駅のホームを舞う風が運ぶのは、夜明けを待つハトたちが歌う、忘れられたゴスペルだ。
誰のためだ?
ドアが閉まり電車が動き出す。
僕はコートのポケットに両手を入れたまま俯いていた。
この世界は、いつのまにか飽和状態で。
たぶん、人が多すぎるんだ。
だから――。
ある日、誰かが押し出されるようにして、世界の外側に墜ちていく。
神様は、いつだって、それを見て見ぬフリをする。
けれど、それが僕だったなら良いのに、と思う。
そして、地上と空がひっくり返ったら良いのに。
そうすれば、どこまでも墜ちていけるのに。
永遠に墜ち続けていれば、神様だって追いつけやしないだろう。
そうして、いつか、神様なんて忘れてしまえるのならば、きっと僕は平和だろう。