エゴイストよ、赦せ
暖かいものは、上へ上へと昇っていく。

愛情とかも、きっとそう。

いつだって、最後に残されるのは、悲しみと溜息と、そして僕。

神様に召し上げられているんじゃないかって、ときどき、そう思うよ。


僕は、父の顔を知らない。

母は、僕と兄を捨て、家を出ていった。

親代わりだった兄は、僕が十八のときに死んでしまった。

僕のことを「愛してる」と言ったかつての恋人も、簡単に去っていった。

尊敬していたあの人も、ギターだけを残し、何も言わずに姿を消した。


みんな、みんな、どこかに消えた。


だからって、自分のことを不幸だなんて思ったことはない。

ないけれど。

僕の心には、愛もない。


愛は、


すべて、


消えて、


なくなった。


無くなった。


亡くなったんだ。
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