エゴイストよ、赦せ
左手に温もりを感じ、ローサが僕の手を握っていることに気づいた。

彼女は、やさしい目をして僕を見ていた。

そう、やさしいんだ、とても。


やさしいローサは、いつもの笑顔になる。


どうして、そんな目で、僕を見るんだ? 


どうして、そんな顔で、君は笑えるんだ?


ああ、そうだ、僕も笑わなければ――。


そう思ったけれど。


持っていない……。


もし、ローサが愛を望んでいたとしても、僕は持っていない。

持っていないんだ。


信じているわけでもなく、持っているわけでもなく、望んでいるわけでもない。

僕はローサに、それを与えることができない。


僕は耐え切れなくなって、彼女から目を逸らした。


天井を見つめる。

きっとあの天井が、僕らの限界だろう。

この部屋が僕らの限界だろう。

僕の部屋よりずっと広いこの部屋も、神様の住む、遥か空の彼方からは、見えやしない。

僕らがどうなろうと、神様は気にもしない。

なのに、あたたかいものだけは、きっちりと奪い去っていく。

< 51 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop