エゴイストよ、赦せ
僕の視界に、ローサの顔が入ってくる。
覆いかぶさるようにして、彼女は僕にキスをした。
くちびるが、一瞬触れるだけの。
舞台は暗転して、僕は溺れる海から帰還した。
「……今のは?」
「えっと、魔法のおまじない」
その言葉とローサの真面目な顔が可笑しくて、僕は、おもわず吹き出してしまう。
「ちょっ、笑うかなぁ」
「だってさ。恥ずかしくない?」
「ひどーい」拗ねたような表情で、ローサは言った。
「ごめん、ごめん」
「そうやって、ずっと笑ってれば」
まだ笑っている僕に、ローサは背を向け抗議のポーズ。
可愛いらしい、と思う。
本当に魔法だったのかもしれない。
一瞬にして、僕を笑顔にしたのだから。
ローサの魔法。
いつまで解けないのだろう。
いつかは溶けてしまうだろう。
カレンダーに書かれていれば良いのに。