エゴイストよ、赦せ
二回目の出会いね
会社に着いた僕を待っていたのは、開発中の情報処理システムのトラブルだった。
自分の席に座った僕を見て、上司の小田《おだ》が駆け寄ってきた。
「いやー、参ったよ。エラーの原因が判らないんだ。明日の昼までに報告書上げてくれってさ」
小田は、まるで他人事のように言うと、じゃあ、と片手を挙げて、さっさと帰っていった。
夜間勤務なのは、十人前後。
終電が過ぎても帰れない徹夜組が数人いるが、昼間は六十人程が勤務するこのフロアは、平日の映画館くらい閑散としている。
「いつものことだけど、危機感がないよな」
隣の席の三鷹《みたか》が、イスに座ったまま身体を寄せてきて言った。
「子供が生まれたばかりだし、早く帰りたいんじゃない?」
僕はサーバにログインして、メールをチェックしながら三鷹に答える。
「まっすぐ帰ると思うか?」三鷹は口元をニヤリとさせて言う。
「ああ……、接待」
接待と言っても、取引先相手とではなく、小田の上司、それから本社の人間相手のものだ。