エゴイストよ、赦せ
エラーの原因は、作業開始から二時間ほどであたりをつけることができた。

原因が分からないと騒ぐような場合は、スペルミスだとか、符号の間違い、関連付けの間違いなど、単純なミスであることも多い。

今回もそういったミスが重なっていたものだった。

担当したプログラマ本人は意外と気づかない。

昼間の担当者がチェック済みのフェーズの中から、共通項が見られるエラー箇所だけに絞り、三鷹が書いた簡単なプログラムを走らせて潰していった。

とはいえ、短時間で見つけられたのは非常にラッキーだったと言える。

修正範囲が同フェーズ内だけで済みそうなことも同様だ。

あとの作業は本来の担当チームにまかせて、僕らは通常の業務に戻ることになる。


「これで、安心して飯に行けるな」


簡易テストを終えた三鷹が言う。


「そうだね」


「おい、報告するのは、もっと後にしてくれよ」


僕が、報告用の文書を作成しているのを見て、三鷹が言った。

彼はいつも、どんな仕事でも、実際の作業時間に幾らか上乗せしてみせる。

自分の能力を低く見せたいようだ。


「うん。まだ送信しない」


メールを受け取る担当者が、出社するのは朝の九時だ。

遅らせても、仕事に影響は出ない。
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