エゴイストよ、赦せ
「知ってるか? 向こうの担当者、最近は、おまえの報告書しか見てないらしいぜ。小田ちゃんのはスルーだ」


三鷹は本社や他の情報センターなどの情報を、いつもどこからか仕入れてくる。


「ふーん」


「なんだ、興味ないのか?」意味有りげに三鷹は言う。


「俺に関係あるの?」


「そりゃあるだろう。なけりゃ言わん」


「何?」


「噂だけどな、ここの部署は潰す予定らしい」


「へー」


「もっと驚けよ」三鷹は苦笑する。


「それで?」


「その後の話だけど、おまえは第一情報センターに呼ばれるみたいだ」


「部署は?」


「新設されるらしい。そこの責任者になるのが、おまえのメール相手じゃないかって噂だ」


「そうなんだ」


「だから、驚けよ。そして喜べ」


「何で?」


「憧れの本社勤務に近づいたんだぞ」


三鷹は、顔を上に向け、両腕を左右に広げて言う。

ミュージカルでも始まるのか、と思うような大袈裟な演技をわざとしている。

『濃い』と言われる部類だけど、整った顔とモデル体系の三鷹だけに、そのポーズが、やけにはまっていて面白い。
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