エゴイストよ、赦せ
僕と三鷹は、食事を取るために、近くのファミリーレストランへと向かった。
昼間は寒さがやわらいでいる日もあるようだが、夜の世界は春の息吹を感じさせない。
車道を流れるヘッドライトを避けるように、冬が歩道を闊歩し、点滅する青い信号を見れば、思い出したかのように、路地裏へと冷たい風を躍らせた。
寒さにアスファルトが震えるけれど、僕はそこに溜息を零すことしかできない。
無愛想なコンクリートの階段を昇り、店のドアに手をかけたとき、ローサからメールが届いていたことを思い出した。
「ごめん。先に入ってて」僕は、ドアを開けて三鷹に入れと促す。
「女か?」
三鷹は、そう言うとコートから煙草を取り出した。
僕は支えていたドアから手を離す。
三鷹の質問には答えずに、ローサからのメールを見た。
三鷹は煙草に火を点けると、ドアの横側に設置されている灰皿の前に移動する。
煙草の煙は風に流されて、沈黙と共に僕の傍らをすり抜けていった。
先に口を開いたのは三鷹だった。
「前から思っていたんだけどな、おまえは俺の知ってる奴によく似てるよ」