エゴイストよ、赦せ
「突然、何言い出すんだよ」


僕は三鷹の急な言葉に少し戸惑い、背を向けたままの彼に向かって笑った。


「おまえはな、世の中とか他人に対して疑問を抱え過ぎなんだ」


「疑問くらい、誰だって持ってるよ」僕は三鷹の背中を見ながら言う。


「抱え過ぎだって言っただろう。大抵の奴は、何らかの答えを出してしまうんだけどな」


ゆっくりとした口調で、そう言うと、三鷹は身体をこちらに向けて僕を見た。


「たとえば、『今年の新入社員の傾向は?』みたいなのがあるだろ? 胡散臭い連中が、勝手に、一括りにして名前なんかつけるアレだ」


「ああ、あるね」


僕は軽く頷く。


「ああやって、理解したつもりになるんだよ。適当な答えを見つけて納得するんだ。それができないなら、無視する。そのうち忘れる。そうやって先に進む。おまえは抱え込んだままだろう。だから、どんどん疑問が増えていく。違うか?」


「どうかな? 自分はどっちなわけ?」


三鷹の問いには答えずに、質問を返す。


彼が何を言おうとしているのか、ということに、僕は思考の半分を割り当てていた。
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