エゴイストよ、赦せ
「俺か? 俺は、他人にあまり興味がないからな。無理に理解したいとは思わない。ひとりひとり違うんだ。どのみち全員なんて理解できるわけがないしな」


三鷹は、そう答える。


それは僕だって同じだ、と思う。

だから、僕と三鷹は、それなりに上手くやってこられたんだ。

お互いに、深く干渉しようとしなかったから。


「全員って……、俺だってそんなふうに思ったことないよ」


「たったひとりの人間のことだって、すべてを理解するなんて不可能だぞ。それが肉親でもな。だから、言葉が生まれたんだよ。少しでも補うために。誰かのすべてを理解している、なんて思ってたら、それは傲慢で緩慢な、自分勝手な思い込みだ」


「どうしたの? やけに熱いね。寒さのせい? 自家暖房してるんだ?」


僕は少しおどけて言った。


「茶化すなよ」三鷹が僕を睨む。 


「悪かった」僕は片手を挙げて謝る。

らしくない、と思った。

続けて尋ねる。「それで?」


三鷹は煙草を吸い、インターバルを取る。

煙を大きく吐き出すと、煙草を灰皿に押しつけて火を消した。


「さっき言った、おまえに似た奴がどうなったか、わかるか?」


ああ……、そうか。

そういうことか。
< 62 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop