エゴイストよ、赦せ
「……わかるよ。よくわかる」


僕は、三鷹が言いたかったことが、ようやく理解できた。 


「おまえも同じか?」三鷹は僕を真っ直ぐに見ていた。


「そうだって言ったら?」 


「やめとけとは言わない。けどな、おまえを見てくれている奴がいるんなら、そいつには、ちゃんとしとけ」 


「ちゃんとって、何を?」


「わかるだろ?」


ほんの少しだけど、三鷹の口調が強まった気がした。


「何も……変わらないよ。そんなことしたって」


「そうだとしても、そうするのがおまえの責任だ。それに、おまえはまだ……」


「まだ?」


「気づいていないフリか? それとも俺の勘違いか?」


すべてお見通しだ、と言わんばかりの三鷹の言葉に、僕は少し苛立ってくる。

正直、放っておいて欲しかった。


「……なんで急に、こんな話をするんだよ?」


「俺が嫌な気分になりたくないからだ。それ以上でも以下でもない」三鷹が即答する。


そのとき店のドアが開いて、大学生ふうの若い男が二人出てきた。

彼らは訝しげな目で僕らをチラっと見てから、そそくさと階段を下りていった。
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