エゴイストよ、赦せ
おやすみを言い合い、ローサが眠ってからも、僕はずっと考えていた。


三鷹が僕に言ったこと。

わかっていたこと。

わからないこと。

話すべきこと。

話せないこと。

それらは、何度も混ざり合い、何度も引き離され、頭の中はぐちゃぐちゃで、けれども、綺麗に分離していて。

そんな矛盾だらけの僕は、やはり矛盾だらけの答えしか見つけられない。


そう、僕は矛盾している。

もうずっとだ。

子供の頃、僕は早く大人になりたいと思っていた。

自分ひとりでも生きていけるように。

大人になるってことは、自分をどんどん切り捨てていくことだって、知っていたのに。

それでも、兄に迷惑をかけたくないと、それだけは思っていた。

母が出て行った夜、残していった5万円を、笑いながら破り捨てた兄を見て、そう思った。

中学を卒業したら、働こうと思っていたけれど、兄は僕を高校にいかせてくれた。

「俺のことが嫌いじゃないなら、頼むからそうしてくれ」と言った兄の言葉は、僕に対する愛情とか、義理とかというよりも、僕らを捨てた母親への兄なりの意地だったのだろう。

けれど、その兄も、もう居ない。
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