エゴイストよ、赦せ
疑問を抱え過ぎだ、と三鷹は言った。

何も考えないで済むのなら、それが一番だろう。

答えが見つかるのなら、何だって良いだろう。

けれど、考えるということをやめるのは、人間をやめるということではないだろうか。

生きながら死ぬことになる。

ゾンビの列に加わって、擦り切れた絵画の中の廻廊を彷徨い歩く。


世界から、はみ出さないように、

押し出されないように、

小さくなって、

他人と、ぶつからないように、

潰されないように、

そう願って、

大切なものを、切って、捨てて、

考えないように、考えないように、

どうして、そうまでして生きるのかなんて、

考えないように、考えないように、

忘れて、祈って、

そう、考えるな、考えるな、

ええ、忘れます、忘れます、

ですから、神様、どうか、どうか、

幸せをください、

ささやかな幸せを、

神様、

ああ、神様!


あのゾンビたちは、自分がすでに死んでいることに気づかないまま、腐った身体で歩いている。
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