エゴイストよ、赦せ
僕は彼女から身体を離して、その顔を確かめた。

間違いない、ローサだ。

思わず彼女を抱きしめようとして、その細い首が目に映る。

僕は、彼女の肩を掴んでいた自分の手を離し、見た。

僕の両手は、まだ震えていた。

この両手でローサの首を絞めたんだ、そう思うと、もう彼女の顔を見ることができなかった。


「凄くうなされてたよ」ローサがやさしく言う。


「でさ、あたしの名前呼んでた。これって複雑だよねぇ。喜んで良いのかどうか」


やさしい声だった。

けれど、僕は笑えない。

彼女を見ることができない。


僕は夢の中の出来事をローサに話した。

赦しを請うように、俯いたまま話した。


ローサは黙って僕の話に耳をかたむけていた。


夢の話が終わっても、僕は話し続けた。


「俺はね……、愛してる……とか、愛されてるとか、ダメ……なんだ」


ぽつりぽつりと話した。


「何も……信じられないんだ。何もかも……嘘に……見える。この世界も……、自分自身も。もう、すべてが」


途切れながらも話した。


僕は、話した。
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