エゴイストよ、赦せ
長い沈黙の後、声を搾り出すようにローサが言った。


「同じだよ……あたしも同じ。愛なんて、信じてないよ」


僕は驚き、顔を上げて彼女を見る。


「だけど……、あなたのことは信じてる」僕の目を真っ直ぐに見つめながら、彼女は言った。


「何を……、俺の……、何を信じてるって?」


「わかんない」


「わかってないのに、どうして信じられる?」


「わかんなきゃダメ? わかってなくちゃダメなの?」


責めるような口調で言った僕を見つめる彼女の目には、涙がひとつぶ。

彼女は、そのひとつぶを零すことなく、やさしく笑った。

瞳の奥に力強い灯を宿して。


その笑顔はきっと、どんな泣き顔よりも悲しい、溢れる想いを纏ったイデアで。


そのひとつぶはきっと、詩人が失くした、星とエーテルで創られた宝石の記憶で。


僕は、けれど、僕は。


「……いつか本当に、君を壊してしまう気がする」


「そんなことない!」 


ローサは両手で、僕の両手首を掴み、そして、僕の両手を自分の首元へとあてがった。


「なにを!?」僕は手を引こうとする。


けれど、彼女がそれを許さない。


「信じてるの! 理由とか、理屈とか、どうだっていい! どうだっていいの!」


「わかった、わかったから、やめてくれ!」
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