エゴイストよ、赦せ
「みーから預かってる」


そう言って、絵莉はバッグから小さな手提げの紙袋を取り出した。


僕は、それを絵莉から黙って受け取る。


「少し前にね、電話があって頼まれたの」


「そう……。いつ会ったの?」


「会ってないよ。家にね、送られてきたの。他にもいろいろあのコから貰う物があって……。それと一緒にね」


「服だけじゃなかったんだ」


僕は意識して、少し微笑みながら言った。

テーブルの上に注がれる太陽の光が疎ましかったので、ミルクと一緒にその光をアイスティーの中に沈めた。


絵莉は煙草を取り出し、ライターで火を点ける。


「煙草、吸ってたっけ?」


「ああ、あの日は彼と会う予定だったからね。彼、煙草嫌いだから。仕事も内緒にしてんの」


「仕事?」


「あれ? 知らなかった? みーと同じお店にいたんだよ、アタシ。今は違うんだけどね」


絵莉は笑いながら、ウィッグだというその巻き髪の先を左手の指で軽く弾き、「こんな姿、見られたら大変」と言った。


絵莉が煙草を吸うその仕種は、僕がイメージするキャバクラ嬢そのものだった。

口調も、少し違っている。

見た目だけでなく、絵莉という人間そのものが、別人と入れ替わったかのように見えた。

あの日の彼女が嘘で、目の前の彼女が、本当の彼女なのだろうか。
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