エゴイストよ、赦せ
その三秒間で、彼女のニッコリはニコニコへと変身した。

酔っ払い、それが結論。

視線を逸らす。

負けたみたいで嫌だったけど。

我関せず、これが正解。

それで終わり。

そのはずだったのに……。


迂闊にも僕はチラリ、と彼女の様子を窺ってしまったんだ。

後悔した。

見るんじゃなかったと思った。

だって、そこには、先ほどまでのニッコリからニコニコまでバージョン・アップした彼女はもう居なくて。

その代わり、酷く落ち込み悲しい顔で俯いている、バージョン・ダウンな彼女が居たんだ。


それでも無視すれば良かっただろ、って? 

このときの、彼女の落ち込みようったらなかった。

『世界の終わり』が来たのか、と勘違いしそうなくらい。

本当なんだ。

纏う色なんて、海の青さよりも深かったんだから。
< 9 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop