エゴイストよ、赦せ
僕らはどうだった? 

大切な言葉を紡ごうとすらしなかった僕と、笑顔を見せ続けるだけだったローサ。


いろいろと遅すぎたんだ、僕らは。


今更それを知ってどうするのだ、と僕は思ったけれど、絵莉に、ローサのことで気づいたことを尋ねた。


「もしかしてフランスじゃないかな?」


「え?」絵莉は驚いた顔で僕を見た。


ローサが持っていたCDは、ジャニスとクイーン以外はすべて日本語表記がなかった。

輸入盤だとばかり思っていたけど、あれらは、おそらくフランス国内で購入したものだろう。

ほとんどがフランスのミュージシャンだったじゃないか。

一番新しいのが三年前に発売された物だった。

風景の写真集も、そうなのかもしれない。

撮影したのはイタリアの女性だったか。

中は見てないけれど、カバーには日本語は書かれていなかったと思う。

小説が日本語だったので、不思議に思わなかったんだ。

それらは日本に来てから買ったのだろう。

これは想像だけれど、もしかしたら、読んだことのある本を選らんだのかもしれない。

漢字の勉強のため、とかね。


――え!? 教科書? 美術の絵……とか?


不思議そうな顔をしていたローサを思い出す。

世代とか、教科書の出版元が違うとか、そんな問題じゃなかったというわけだ。
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