エゴイストよ、赦せ
絵莉もそれほど詳しくは知らなかったけれど、彼女から聞いた話によると、ローサは日本で生まれ、八歳の時にフランスへ引っ越し、二年前に彼女だけが日本に戻ってきたのだ、という。

ローサも家庭にいろいろと問題を抱えていたらしい。

父親は二度変わっているそうだ。


それから、ローサはひとつだけ、僕に嘘をついていた。

彼女は、お店の人たちは自分のことを『ローサ』と呼ぶ、と言った。

それが彼女のついた嘘だ。

絵莉の名前もそうだが、『みー』というのが、店での名前。

つまり、ローサというのは彼女の本名だった、ということ。


「手紙が入ってると思う」


絵莉の声に、僕は渡された紙袋へ視線を向ける。


「そう……」


「読まないの?」


「それは読めってこと? ここで?」


絵莉は答えずに、じっと僕を見つめた。


僕は仕方なく紙袋に手を伸ばす。
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