エゴイストよ、赦せ
「大事なこと?」


「うん……、ごめんなさい。とても大切な言葉が書いてるけど、足りないよ。これだけじゃ」


「何か知ってるんだ?」


「見てみれば?」絵莉は、紙袋を指差す。


「マフラーの代わり?」


「そう……」


紙袋から、丁寧にラッピングされた“それ”を取り出して開けてみた。

包装紙の中には、黒いラインで縁取られたグレーのハンカチが一枚。  


「これが何?」


「何も気づかないわけ?」絵莉は、呆れた、という表情になる。


僕は煙草の箱に手を伸ばす。


「ハンカチに意味があるってことだよね?」


煙草に火を点け、深く吸い込む。


「そうだよ」絵莉も二本目の煙草に火を点ける。


僕は考えてみるが、何も思い浮かばなかった。


「するどいかと思えば……、ニブイね。思い出さないんだ?」


「思い出す?」


「みーと初めて会ったときのこと」


「憶えてるよ」
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