エゴイストよ、赦せ
罪の海
天井の低い個室のテーブル席で、ジョッキグラスを軽く合わせると、三鷹は生ビールを一気に飲み干した。
「珍しいね。そんな飲み方する奴だった?」
「豪快だろ? イメチェンだ」三鷹はニヤリと笑う。
「意味わからない。外見じゃなくって?」
「認識のされ方は、同じだ。目から入力されるだろ? 視覚ってのは、人間の知覚能力の中でも約80%を占めてるそうだ」
「ついでに、聴覚の方もイメチェンしたら?」
「そりゃ、どういう意味だ。俺のインテリジェンスなトークが気に入らないのか?」
そう言って三鷹は、中指で眼鏡のフレームを押し上げるジェスチャーを二回繰り返した。
もちろん彼は眼鏡をかけていない。
インテリジェンスから眼鏡を連想したのだろう。
「イメージの仕方が貧困だなぁ。それと三鷹は、外見からは知的に見えないから」
「悪かったな!」
僕が声を出して笑うと、三鷹も同じように笑った。