『新撰組のヒミツ』短編集
「何だか暗い気持ちになってしまって。
――芹沢さんの一件で」
本音を語った山崎さんに触発され、沖田も胸にある感情をそっと打ち明けた。二人は目を伏せるが、暗殺について何も知らない平助が息を吐く。
「よし! 総司、着いて来て!」
平助の笑顔は明るい。そう、血塗れの僕にはいっそ眩しいくらいに。輝きに引きずられるように、僕は笑みを浮かべた。
*
そのまま平助に連れて行かれたのは、沖田の心中などまるで何の関係無いというように賑やかな京の街中だった。
酷暑を過ぎた涼やかな風が体に当たり、去りゆく夏の香りを吸い込み、深呼吸をする。
後ろにいるのは、二人並んでいる山崎さんと光さん。彼らは監察の仕事があったようだが、平助が無理を言って来てもらった。
表情を崩して街の女に声を掛ける左之、ただ棒立ちをする一くん。
それぞれ珍しい組み合わせであるが、後者は平助が「街に行こう!」と言って、昼間に暇だった仲のいい者たちをかき集めた結果だ。
「ちょっと、突っ立ってないでこっち!」
後ろの四人(特に一くん)に声を掛けた平助は、手招きをして近くの甘味処に向かった。昼餉を取っていない面々は、甘く重い昼餉に顔をひきつらせる。
「俺は帰ってもいいか」
「一! 駄目に決まってんだろ!」
「嬢ちゃん、俺と一緒に――」
「左之! 余所見しない!」
「烝、甘味食べる? 私、ちょっと食べたい」
「ん? 光が食べたいんやったら俺も貰おか。要らへんなら俺が食べたるで」
「そこォォ! 不純同性間交遊禁止!!」
顔を赤くして怒る平助に、沖田は笑いがこみ上げてくる。噴き出す寸前で堪えた沖田に、平助は「ちょっと待ってて!」と言うと、四人の元に走っていった。
暫くして帰ってきた四人と平助。何やら嫌な予感を覚えて腕をさすれば、鳥肌が立っていた。
(ちょっと、何するんですか……)
――芹沢さんの一件で」
本音を語った山崎さんに触発され、沖田も胸にある感情をそっと打ち明けた。二人は目を伏せるが、暗殺について何も知らない平助が息を吐く。
「よし! 総司、着いて来て!」
平助の笑顔は明るい。そう、血塗れの僕にはいっそ眩しいくらいに。輝きに引きずられるように、僕は笑みを浮かべた。
*
そのまま平助に連れて行かれたのは、沖田の心中などまるで何の関係無いというように賑やかな京の街中だった。
酷暑を過ぎた涼やかな風が体に当たり、去りゆく夏の香りを吸い込み、深呼吸をする。
後ろにいるのは、二人並んでいる山崎さんと光さん。彼らは監察の仕事があったようだが、平助が無理を言って来てもらった。
表情を崩して街の女に声を掛ける左之、ただ棒立ちをする一くん。
それぞれ珍しい組み合わせであるが、後者は平助が「街に行こう!」と言って、昼間に暇だった仲のいい者たちをかき集めた結果だ。
「ちょっと、突っ立ってないでこっち!」
後ろの四人(特に一くん)に声を掛けた平助は、手招きをして近くの甘味処に向かった。昼餉を取っていない面々は、甘く重い昼餉に顔をひきつらせる。
「俺は帰ってもいいか」
「一! 駄目に決まってんだろ!」
「嬢ちゃん、俺と一緒に――」
「左之! 余所見しない!」
「烝、甘味食べる? 私、ちょっと食べたい」
「ん? 光が食べたいんやったら俺も貰おか。要らへんなら俺が食べたるで」
「そこォォ! 不純同性間交遊禁止!!」
顔を赤くして怒る平助に、沖田は笑いがこみ上げてくる。噴き出す寸前で堪えた沖田に、平助は「ちょっと待ってて!」と言うと、四人の元に走っていった。
暫くして帰ってきた四人と平助。何やら嫌な予感を覚えて腕をさすれば、鳥肌が立っていた。
(ちょっと、何するんですか……)