『新撰組のヒミツ』短編集
途端に元気になる原田を尻目にして。


光さんはいつもの堅い雰囲気は無く、周りに花でも咲いていそうな雰囲気で、運ばれてきたみたらし団子を嬉しそうに食べていた。


その様子を笑いながら見ている山崎さん。彼の気持ちが沖田には分かりやす過ぎて、思わずお節介をしてしまいたくなる。


沖田の目からは、お互いがお互いを憎からず思っているように見えるのだが、伝えるつもりが無いのだろうか。


……というより、彼の好みが光さん(男)だとは知らなかった。以前、山崎さんは土方さんに誘われて何度も遊郭に足を運んでいたのを知っていたため、てっきり女好きだと思っていたのだが。


(あれ、これ言っちゃ駄目でしたね)


光さんが隊士になって間もない頃、山崎さんが真剣な表情で「あの事は、光には死んでも言うたらあかんで」と、警告してきたことを思い出した。


何かを察知したのか、山崎さんがこちらに視線を向けてくる。光さんに向けていた柔らかい視線はどこへやら“何見てんねん”という恐ろしい目だった。


(あー、怖い怖い。貴方、こんな時だけ態度が露骨なんですよ。自覚あります?)


「烝、いる?」


「もう要らへんのか」


「うん、もういい。あげる」


光さんも山崎さんと話すときだけ口調や表情が柔らかい。仕事柄だろうか、二人はいつも愛想笑いなどが多く、純粋な笑顔が少ないため、沖田は得した気分になった。


しかし「光、垂れ」と山崎さんが光さんの口元を拭った指を舐めるのは、流石にやり過ぎだろう。案の定、光さんは少し顔が赤い。


「あ、ありがとう……」


「ええよ。……顔赤いで」


「暑いんだよ! 烝のアホ!」


色気がある笑みを浮かべる山崎さんから、光さんは斜め上に視線を逸らす。光さんの恥ずかしそうな様子をじっと見る山崎さんは、やはり意地が悪い。





……あの、お二人様。





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