『新撰組のヒミツ』短編集
野太い声を上げたのは原田である。周りを同じ隊の者たちに囲まれた彼は、腰に手を当てて胸を逸らしているところからして、どうやらやる気は十分なようであった。


前に進み出る原田たちを尻目に、山崎と光はやや冷ややかな目で彼らを見つめる。


幽霊のたぐいを恐れている訳ではないのだが、何が起こるか分からない場所へ、一番に出向きたいとは思わなかった。


「……ま、様子見にはなるやろ」


「まあ、確かにそうかもね」


ぼそりと呟いた山崎に光は苦笑する。奇しくも同じ考えを抱いていたことに対し、やはり兄弟弟子であることを改めて実感していた。


「じゃあ、次は僕たちが良いです」


そう言って笑い、片手を軽く挙げた沖田。彼は平隊士とは組まずに藤堂と斎藤の二人と組を組んだらしい。恐らくこれは仲の良い者同士なのだろう。


「なら、二番目を総司たちにしましょう」


「よっしゃあああ!」


歓声を上げるのは藤堂だ。嬉しそうに拳を固め、吸い込まれそうな闇夜に突き上げる。今すぐに出発したいといった喜びようである。


一瞬、年長者たちは藤堂にぬるい視線を向けたが、続々と挙手をし始める隊士たちを見ると、直ぐに表情を戻して順番を決めていった。







続々と出発する組がいる中、とうとう山崎たち三人が出発する四組目の番が来た。


既に表情が強ばっている吉村の力を抜けないかと、どうにか話しかけるのだが、話題は尽き、ついに誰も話さなくなった。


山崎は興味なさげな様子であり、吉村はこの通り、恐怖の為か何も話さない。そして、光は大きなため息をついて暗く伸びた一本道をただ歩いていった。


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