『新撰組のヒミツ』短編集
例の井戸にいた霊。
あまりにも目撃件数が多く、その話になれば、尋常ではないほど隊士が怯えるため、幽霊の話は以後禁句になった。
いつもは騒ぎ立てる面々も珍しく神妙であったことから、相当に堪えたらしい。原田も「暑い」と漏らさなくなった。
そして、監察が気配を消して背後から近付くと、鬼副長の顔色が僅かに悪くなる。
「命令だ。まずは近づく前に声を掛けろ」
流石に、鬼副長も人の子どもらしい。
―おわり―