『新撰組のヒミツ』短編集
疲れたように安堵のため息を漏らす山崎は、光の身に着けている着物に目をやると、その両目を大きく見開いた。
「青……?」
「そうだよ」
小さく笑って微笑んだ光は、スッと衣擦れを立てて立ち上がり、その着物をよく見えるようにした。
紺を基に青い線が縦横に入っている。裾は白く縁取られ、この暑い季節に涼しく、清楚な印象を受ける着物である。
「どう? 赤よりもいいでしょ」
不思議なことに、女の格好をするだけで、「ふふ」と微笑む仕草もとても女らしい。彼女からは、可愛らしさではなく、大人びた綺麗な印象を受けた。
入り口で見ていた斎藤も、あまりの変わりように目を見張っている。
「……髪、結わないのか」
斎藤の言葉に光はガクガクと首を振る。
「結いたくありません……私はあの髪型が一番嫌いなんです。何故と言われても、ただの世代間の違いとしか……」
昔の女性の髪型。これが光が女の装いを嫌がる一番の理由であった。この時代で幾ら暮らしたとしても、嫌いなものは嫌いなのだ。
世代間の違い(ジェネレーションギャップ)という言葉をすんでで飲み込んだ光は、髪を違う方法で纏める。
「ほら」
「ありがとう。……あ!」
さり気なく山崎が差し出した簪に、光は手を伸ばそうとする。しかし、唐突に思い立た彼女は、自分の文台に駆け寄り、何かを取り出した。
「青……?」
「そうだよ」
小さく笑って微笑んだ光は、スッと衣擦れを立てて立ち上がり、その着物をよく見えるようにした。
紺を基に青い線が縦横に入っている。裾は白く縁取られ、この暑い季節に涼しく、清楚な印象を受ける着物である。
「どう? 赤よりもいいでしょ」
不思議なことに、女の格好をするだけで、「ふふ」と微笑む仕草もとても女らしい。彼女からは、可愛らしさではなく、大人びた綺麗な印象を受けた。
入り口で見ていた斎藤も、あまりの変わりように目を見張っている。
「……髪、結わないのか」
斎藤の言葉に光はガクガクと首を振る。
「結いたくありません……私はあの髪型が一番嫌いなんです。何故と言われても、ただの世代間の違いとしか……」
昔の女性の髪型。これが光が女の装いを嫌がる一番の理由であった。この時代で幾ら暮らしたとしても、嫌いなものは嫌いなのだ。
世代間の違い(ジェネレーションギャップ)という言葉をすんでで飲み込んだ光は、髪を違う方法で纏める。
「ほら」
「ありがとう。……あ!」
さり気なく山崎が差し出した簪に、光は手を伸ばそうとする。しかし、唐突に思い立た彼女は、自分の文台に駆け寄り、何かを取り出した。