『新撰組のヒミツ』短編集
手にしたそれを髪に挿すと、満面の笑みで山崎の下に戻る。何事か、と山崎は光の髪を見ると、そこには目にも鮮やかな新緑色の簪が挿されていた。
「烝に貰った簪!」
「あっ……」
確かに、そこにはいつの時か山崎が光に贈った簪が付けられていた。静かな雰囲気だった彼女に、明るい活動的な色が加えられ、山崎は無意識に見入ってしまう。
(俺のあげたあの簪を付けて……)
――手に入れたいと思った。
ここにいる斎藤にも、潜入した先の誰にでも見せたくない。誰かが彼女の魅力に気付く前に、自分のものに――……。
抑えていた心が、乱れる。
「ほら、どう?」
「――綺麗や」
感じたままにそう呟くと、彼女はやはりというか斜め上に理解しまい、「やっぱり! 青と黄緑って綺麗だと思ったんだ」と、着物の事だと思ったようである。
少し安心したような、残念だったような。山崎は、そんな感情を抱いて彼女を眺めていると、背後にいた斎藤が彼にそっと耳打ちをしてきた。
「“着物じゃなくて、お前が綺麗だ”」
「!?」
丁度、内心で考えていたことを口に出され、山崎は声にならない悲鳴を上げた。バッと振り返ると、斎藤は唇の端を吊り上げて笑っている。
「お前の態度を見ていれば分かる。まあ、光は分からなかったようだが……はっきりと言わなくていいのか」
「烝に貰った簪!」
「あっ……」
確かに、そこにはいつの時か山崎が光に贈った簪が付けられていた。静かな雰囲気だった彼女に、明るい活動的な色が加えられ、山崎は無意識に見入ってしまう。
(俺のあげたあの簪を付けて……)
――手に入れたいと思った。
ここにいる斎藤にも、潜入した先の誰にでも見せたくない。誰かが彼女の魅力に気付く前に、自分のものに――……。
抑えていた心が、乱れる。
「ほら、どう?」
「――綺麗や」
感じたままにそう呟くと、彼女はやはりというか斜め上に理解しまい、「やっぱり! 青と黄緑って綺麗だと思ったんだ」と、着物の事だと思ったようである。
少し安心したような、残念だったような。山崎は、そんな感情を抱いて彼女を眺めていると、背後にいた斎藤が彼にそっと耳打ちをしてきた。
「“着物じゃなくて、お前が綺麗だ”」
「!?」
丁度、内心で考えていたことを口に出され、山崎は声にならない悲鳴を上げた。バッと振り返ると、斎藤は唇の端を吊り上げて笑っている。
「お前の態度を見ていれば分かる。まあ、光は分からなかったようだが……はっきりと言わなくていいのか」