お嬢様と執事。~桜の奇跡~
そんなことを考えながら
ぼんやり歩いていたから
私の後ろにずっといた人達に
気づかなかった
「んむっ……!?」
いきなり後ろから誰かに
口を塞がれて
路地裏に引っ張られた
「んーっ、んーんー!!」
ありったけの力で抵抗したのに私の口を塞ぐ手の力は弱まらない
『こいつ、本当に金持ちの娘
なのか?
すげぇ暴れてるけどよ』
『間違いねぇよ、さっきリムジンから降りて来たのをばっちり見たんだからな』
『それなら身代金はたっぷり
貰えるな』
――この人達、誘拐犯だ
こんな人達にさえ家でしか
私の存在を認めてもらえない
そんな事実が悲しくて
私は抵抗する力を緩めた