Anathema Reaper-呪いの収穫者-

「まずは腕から」

「……ハイ」

近くから椅子を引き寄せ、蘭の前に座る。
蘭は自前の救急ポーチから消毒液を出すと、腕を出すように指示した。

廉は無言でYシャツを捲り、両腕を差し出す。
彼女は腕の切り傷に、容赦無く消毒液を吹き掛けた。

「いだいっ!!」

「我慢して」

「……ハイ」

無言の圧力。
何故か彼女に逆らうことは出来ない。
廉は下を向いた。

すると、今まで手際よく治療していた蘭の手が止まった。

「ねぇ、どうしちゃったの?」

「……え?」

蘭の顔色を窺うように、廉が顔を上げる。
彼女は今にも泣きそうな顔で廉を見ていた。

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