Anathema Reaper-呪いの収穫者-

「……」

何も返せない。
そんな彼に構わず、話を続ける彼女。

「アナタはね……もう少し他人を疑った方がいいと思うの。
世の中、誰もが善人ってワケじゃないのよ」

「何だよ……いきなり」

「言いたかったこと。それに、アナタの血は他の人と比べて汚れてないわ」

カトレアは、廉の頬の傷を触った。
彼女の親指に赤い血がつく。
彼女はそれを自分の唇へ持っていき、ペロリと舐めた。

「清廉潔白って言葉が相応しいのかも。私利私欲が無いことも結構。
でもね……無知は最大の罪だわ」

そして、カトレアは自分のフードに手を掛けた。
ハラリとフードを取り、廉と目を合わせる。

「嘘……」

彼女を見た瞬間、廉は小さく首を振った。
信じたくない。
そんな気持ちだ。

彼の反応を楽しむかのように、彼女は優しく微笑んだ。

「驚いた顔も、認めたくないって気持ちも、全部引っくるめて私はアナタが大好きよ……廉くん」


そこに立っていたのは他でもない、廉の心のオアシスだった少女――山吹蘭、その人だった。

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