Anathema Reaper-呪いの収穫者-

心の果てに


「……ごめん」

ひとしきり泣いた後、廉は静かに立ち上がった。
頬には、まだ涙のアトが残っている。

彼の手には鎌、もう片方の手にはカトレアが握られている。
その顔は凛としており、どこか吹っ切れた表情をしていた。

「いいわよ」

リュカが静かに答える。
正紀は何も言わず、ただ頷いた。

「もうなんか、ホントよく分かんね……心ぐちゃぐちゃで、何も思い出せないんだ」

「俺も。全部思い出せるのに、名前だけ思い出せない。しかも、輪郭とか何かぼんやりしてるし」

「それがこの鎌の威力なのよ」

リュカが鎌を指差す。
廉はもう光っていない、鎌のルビーを見つめた。

徐々に彼女の事が薄れていく。
それが嫌で、彼は目を閉じた。

瞼の裏に、レンの顔が浮かぶ。
彼は、廉の方へ手を伸ばす。

「やっべ……」

彼に引き込まれるように、廉の意識は闇へ落ちた。

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