Anathema Reaper-呪いの収穫者-

廊下の窓際に廉は佇んでいた。
開け放たれた窓から入る風が、廉の髪を揺らしている。

正紀が彼の隣に立つと、廉は力無く笑った。

「オレさ、よく分かんないんだよね。もう名前すら思い出せない彼女に、変な感情持ってるかも」

「どんな?」

「よく分かんない。だけど、もう一回会いたいかな……なんて」

「そっか……」

今となっては、うっすらとしか思い出せない。
もうこの世には存在しない彼女。

正紀はロッカーから一冊の本を取り出すと、それを廉に渡した。

「何でカトレアの栞かは分からないけどさ……取り敢えず、コレでも読んどけ」

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