素直じゃないあたしを温めて

「いってぇなぁ、やめろって」


そう言った柳瀬の顔は少し微笑んでいて、

あたしの頭を撫でてくれた。




「もうっ……心配にさせないでよっ……不安にさせないでよっ……傷付けないでよっ……馬鹿……柳瀬の馬鹿。馬鹿馬鹿」



「茂里っ……ごめんな」



柳瀬はそう言ってあたしをまた強く抱きしめた。



「なぁ、キスして良い?」



「ええっ!?」



あたしは柳瀬の言葉に吃驚して、思わず大きい声を出してしまった。



嫌、なんて言える訳無いじゃん。


好きなんだから。


大好きなんだから。



あたしはしばらく見つめ合った後、コクンと頷くと


柳瀬はあたしに優しい優しいキスをした。




あたしにとってのファーストキスはこの人によって奪われた。


ファーストキスの味は、少し苦くて、でも甘い、

優しい優しい味がした。



あの時と同じ、柳瀬の温もりを感じた。


「好き」


キスをする事で、もっと好きって言う気持ちがうまれてきた。




もう一度、貴方を信じてみても良いですか?


……答えはその優しいキスの中にあったから、もう聞かないよ。



あたしは、貴方を信じるよ。
< 106 / 440 >

この作品をシェア

pagetop