素直じゃないあたしを温めて
「じゃあ、樹理さんに話してくる。ちょっと待ってて」
拓未くんはそう言ってドアに手をかけた時、
くるっとこちらを振り返り、
「あ、そうそう。自分を守るって言い方間違ってるんじゃないかな。
それ、“自分”を守ってるんじゃないよ。
だってさ、自分がどうこうとかそういう問題じゃなくて、
大切な人と別れたく無いから迷ってるんだろ?
それさ……そう思ってるのは琥珀チャンだけじゃ無いと思うよ」
それだけ言うと、拓未くんは
休憩室から出て行ってしまった。
「…………」
別れたく無いから……
柳瀬と離れたく無いから迷ってる?
……
「ははっ、当たりかもっ……」
あたしは少し開いている窓から見える空を眺めながら、
「あたし、決めたよ。柳瀬……」
ハンカチをギュッと握り締めた。