素直じゃないあたしを温めて
「ちょ、おい!」
後ろから何度も柳瀬の声が聞こえたけど、
あたしは一度も振り向かなかった。
だって、泣いちゃうから。
……悪く思わないで、柳瀬。
これが貴方の為なの。
「何でそんなに泣きそうになってるの?」
山崎くんがあたしの顔を覗きこんで言った。
「……泣きそうになんかなってないよ」
あたしは無理矢理笑顔を作り、
その嘘の笑顔を山崎くんに向けた。
「もう先生の事は忘れてね?君たちはもう、恋人同士なんかじゃ無いんだから」
「……うん」
これから先、あたしはどうしたら良いんだろう。
先が見えないよ。
また、目の前が真っ暗になっちゃったよ。
折角柳瀬が光をくれたのに。
でも、これで良かったんだよ。
これが柳瀬の為なんだよ。
今度はあたしが柳瀬に
光をあげる番だから。
柳瀬の小さな夢、ちゃんと叶えてね?