素直じゃないあたしを温めて
「嫌いになんてならなかったし。むしろ、まじで悔しかった」
「……」
「でもさ、茂里に俺よりも好きな人が出来たなら、それを止める権利ねぇなぁみたいな。俺は納得いかなかったけど、茂里がそうしたいのなら仕方が無いかって思ってた」
「そうだったんだ……」
……止めて欲しかったな。
柳瀬には、止める権利……あるよ?
「でもさー、そんなのただのかっこつけだったわ」
「へ……?」
「たまたま山崎が茂里の手を引いて音楽室に入って行くところを見たから、ああいう形になったけど……目撃する前から本当は今日、山崎から取り返そうって決めてたんだ」
「柳瀬……」
「ていうか、お前隙ありすぎだろ!もっと注意を払えよー。俺とするより先に山崎としちゃう所だったじゃん」
「もっ、もおっ!」
あたしは顔をプイッと背けた。