素直じゃないあたしを温めて


「あ、そうだ!」


あたしはあることを思い出し、ポケットに手を突っ込んだ。


「ん?なに?」


「ずっと渡そうと思ってて忘れてたんだけど……」


あたしはポケットの中から
少ししわがついた白い紙を取り出した。



「これさ、この前柳瀬が休憩室入って来た時に落ちてたの。柳瀬のじゃない?柳瀬が入ってくる前までは何も落ちてなかったし。電話番号が書いてあるんだけど……」



そう、柳瀬がいきなり休憩室に入って来て、あたしを抱きしめた、あの日。


思いだすと恥ずかしくなってくる。



ずっと柳瀬に渡そうと思っていたけど、忘れていた。


「ん?」


柳瀬はあたしからその紙を受け取った。


「柳瀬の?」


「……」


「柳瀬?」



紙を見ている柳瀬の表情から笑みが消え、冷たい表情に変わった。



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