素直じゃないあたしを温めて


「ここに、電話掛けた?」


柳瀬は冷たい表情のままあたしの目を見つめた。

そんな顔、初めてみたからあたしは少し驚き、そして少し怖かった。


「掛けてない……よ?」



どうしたんだろう。
そんなにあたしにバレちゃ駄目だったものなの?



「……ない」


「え?」


「要らない」


「……柳瀬?」



柳瀬は持っていたその紙を片手でクシャっとすると、近くにあったゴミ箱に捨てた。



柳瀬はしばらくゴミ箱に入った、クシャクシャになった紙を睨んでいた。




「……」



こんな柳瀬、初めて見た。



まるで、なにかを憎んでいるかのような表情。

あたしは、そんな柳瀬に目を逸らすことが出来なかった。



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