素直じゃないあたしを温めて

そして、それから何も言わずに顔を近付けてきた。


あたしは抵抗もせず、そっと目を閉じると、





「キスされるとでも思った?」


「なっ……!?」


「ははっ、かわいー」



勘違いしたあたしは、恥ずかしくなって顔を真っ赤に染めていると、



「茂里がそんな格好して他の男誘ってるから、キスはお預けー」


「別にしてほしい訳じゃないしっ!っていうか、この服着てるのはあんたのせいなんだからねっ!」


あたしは、バーカと舌を出すと、


「そうえいば、あの日も此処で茂里からキスしてって言われてしたよなぁ」


と柳瀬が急にしんみりしてそう言った。



あの日……、
あたしが一度、柳瀬と別れた日の事。


あたしは、最後に柳瀬の愛が欲しくて、そうお願いしたんだった。



思いだすと、恥ずかしくなって、
また更に顔が赤くなった。







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