素直じゃないあたしを温めて

「あいつ、茂里に気があるとしか思えないな」


「そんな訳無いよ!拓未くん、ちゃんと好きな人居るって聞いた。それにあたし達が付き合ってる事も知ってるし、さっきだって気にしてた」


「茂里が鈍感なだけだ。あいつは絶対隙を狙ってお前をうば────」


「何にも知らないくせに、拓未くんの事そんな風に言わないでよ!!」



あたしは今まで出した事の無い声の大きさと、怒りを柳瀬にぶつけた。



何も知らないのに、悪く言う柳瀬に腹が立った。


拓未くんの今までの過去や辛い想い、
何も……


何も知らないのに、悪く言わないでよ。



「もう良い、大っ嫌い」



あたしは目に涙を浮かべながらそう吐き捨て、

屋上のドアに向かって走って出て行った。



ガチャン



ドアが閉まる音と同時に、あたしはへたりと床に座り込んだ。





「……言い過ぎた」




腹が立ったのは本当。




でも……





大嫌い、は嘘。

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