素直じゃないあたしを温めて

冷蔵庫から何か飲み物を取り出そうとした時、


ピンポーン


誰かが家に来た。


あたしは冷蔵庫を開けるのをやめ、重い足取りで玄関に近付いた。



「はい?」


「こっはくーっ!久し振りじゃん」


「……由香ちゃん」



ドアの向こうにはいつもの笑顔の由香ちゃんが立っていた。


予想外の来客にあたしはどうしていいか分からず、戸惑って居ると、



「お邪魔しまーす」


と強引に入って来た。


「どうして……?」



あたしの家の中を見渡している由香ちゃんに静かにそう尋ねた。



「だって、琥珀居ないと楽しく無いじゃん?」


「……」



ストレートなその言葉に喜ぶべきなのだろうけど、
今のあたしにそんな気力は無い。


きっと今もひどく疲れた顔をしていて、人に会えるような顔じゃない。
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