素直じゃないあたしを温めて

「今日で最後かあ、寂しいな」


とふと柳瀬がそう呟いた。


「まあ、会えなくなる訳じゃないんだし」


「なんだよー、お前は寂しく無いのかよっ!」



とわざとらしく口を膨らませていた。


あたしはそんな柳瀬をみてプッと吹き出し、


「ガキーッ」


と言って笑った。


「お前の方がな」


と軽くデコピンをされた。



あたしだって……

実を言えば寂しいけど。


結構これでも毎日ドキドキしていた。


自分の好きな人と一緒に暮らすというのは、こんなにもドキドキするものなんだと分かった。



「あ、買い物行ってくるわ」


「あたしが行こうか?」


「へーき。俺行ってくるから」


「分かった。行ってらっしゃい」



柳瀬は子供みたいな笑顔であたしに手を振り出て行った。
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