素直じゃないあたしを温めて

別荘の近くのベンチにあたし達は座った。


海の風で髪の毛がなびく。




「亜衣さんと仲良いんですね」



沈黙に耐え切れず、思わずそう言ってしまった事に後悔した。


おどおどしているあたしを見た幸子さんは、
ふふっと笑ってから静かに


「幼なじみなの」


そう呟いた。




あたしも聞く前からきっとそうなんだろうな、と思っていた。

でも……



「昔、付き合ってたわ」


「……」




覚悟はしていたけど、やっぱり
いざ聞いてしまうと胸がチクリと痛む。


別に、今は何の関係も無いのだろうけど、

ただの幼なじみという関係なのだろうけど……




二人は、想い合っていたという事なんだ。
< 349 / 440 >

この作品をシェア

pagetop