素直じゃないあたしを温めて

「だからもう良いよ、そういう同情。あたしそういうのすごく嫌い」


「俺も茂里と同じだから」


「え…………?」


あたしは振り返り、

柳瀬の顔を見た。



「俺も小さい頃に母親に捨てられてさ。まぁでも俺が小学生の頃だったから養子になったんだけど。父親とは俺が産まれる前に離婚してて、中々会わせてくれなくて。だから、俺は父親を知らない」


「……」



柳瀬も



捨てられた……?



「……なのにやけに明るいよね、あんたって」



そんな過去があれば、

自分を塞ぎこんでしまうのが

普通じゃないの?


なのに柳瀬はいつも笑って、

辛そうな顔一つしない。


あたしには、理解出来ない。



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