素直じゃないあたしを温めて

全て、分かった。



どうして柳瀬を手放したのかも……

幸子さんの涙の理由も。




「それでね、やっと借金が無くなったの。

ちゃんと、返せたの。亜衣ちゃんは私が今琥珀ちゃんに話した事は全部知ってるの……
だから、いつも私を気にかけてくれて……二人が付き合ってる時に、航太の様子とか色んな話を聞いたわ。

そしたらやっぱり私、航太とやり直したいって思っ────」


「ふざけんなっ!」



後ろからそう叫ぶ声がした。



「航太っ……!」



振り返ると、おそらく泣いていたのであろう、
目が真っ赤な柳瀬が立っていた。



「んだよ……なんだよ今更っ!俺がっ、俺が今までどんな思いでっ……!」


「航太っ!ごめんなさいっ」



そう言いながら幸子さんは柳瀬にしがみついた。



「やめろ」



そう静かに言って、幸子さんを離した。



きっと、さっきのあたし達の会話を全部聞いていたのだろう。



だから、“本当の事”

全て、分かったんだよね……?
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