レミリアの一夜物語
暖かな風と共に現れたレシェフはいつものくすんだ色のローブ姿ではなかった。
白い絹の、金糸で織られた高級感のある衣装を身にまとい、銀色の髪は背中に流れ、神官がかぶる帽子をかぶっていた。
ネイトは初めて見るその姿に気づくよりも先に、レシェフの姿に安心して抱き着くと、ただ今まで溜めていたものをはき出すように泣きじゃくった。
レシェフはやはり何も言わず、しかしあやすようにネイトの頭をやさしくたたいていたが、突然かばうようにネイトを抱きしめた。
さすがに驚いてネイトが顔をあげたとき、最初に見えたのは厳しい顔をしたレシェフだった。わずかに緊張も感じられる堅い表情をしたレシェフの視線はネイトではなく、それよりも少し遠いところを見ていた。
「何故貴方がここにいるのですか?」
振り返ると、そこには声にかすかに怒りをにじませた緋竜が佇んでいた。
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