レミリアの一夜物語
「ふふ」
「なんだ」
コウが微笑むと、エンが振り返った。
コウはそっとエンを抱きしめた。
「ほら、やっぱり僕の方が背が高い」
コウはエンの頭に顎をのせて、もたれかかるようにした。
「『前の』コウはオレより低かったんだ」
「そのオレっていうの、やめない?女の子なんだからさ」
「『今は』、な」
「いじっぱり。どうせ前も、その前もずっとそうなんだろ?」
「ほう。『前の』コウがどんなだったか知りたいか?」
「……え?」
「まずお前の躯はそもそも男ではなく……」
「うわ!やめて!聞きたくない!」
コウは慌ててエンから離れて耳をふさいだ。
エンはコウの様子を見てふふ、と先ほどのコウのように笑った。
そしてコウの手首を取り、背伸びをしてコウの耳元に囁いた。
「今のお前も、いいよ」
コウは言葉につまり、そして一気に頬に熱が走るのを感じた。
「耳まで赤いな」
エンがからかうと、コウはうぅ、と唸った。

人が二人住むには少し小さい家に二人は住んでいた。
それでも二人は一度も小さいと思ったことはなかった。
ずっと隣にいて、いつまでも離れられない。
それは一人と同じ質量。
ただ、同じような時の流れでも、いつまでもこの時が続けばいいのにと思っていた。
同時に、そんなことできるはずがないとも思っていた。
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