レミリアの一夜物語
「本当に行くの?」
ネイトはさびしそうに尋ねた。
「うん。僕はこの国を見て回りたい。この国は広いから、今から行かないと、帰ってこれないかもしれない」
幼いが決意をした表情でオシリスが言った。
「それに、コウとエンがついてきてくれるから」
ふふっとオシリスはネイトとそっくりな微笑みで後ろにいる二人と振り仰いだ。
「今までずっと関心がなかったけど、光を追って旅をしてみたいと思ったんだ」
コウが少し申し訳なさそうにそう言った。
「安心しろ。オシリスだけは必ず守る」
エンはネイトの空色の髪をすくい取って誓うように口づけた。
「必ず、帰ってきてね……皆よ、誰かひとりでも欠けちゃだめよ。そうじゃなかったら、こんな旅なんて許可しないんだから……」
泣き出しそうなネイトの肩をレシェフが何も言わずに寄せた。
感情の宿らない薄紫の瞳に、それでも少し悲しそうなあきらめのような色が見て取れて、エンは少し後ろめたくなった。
オアシスを後にしてエンは思った。
隣にコウがいる。
昔からずっと変わらない。
それでも今までの関係は変わった。いや、終わったのかもしれない。
前にはまだ7歳のオシリスがいる。
それは初めて関わった他人との関係を示すような子供。
今までの前振りは終わって、きっとこれからが始まり。
コウは光を追い、エンは闇を追う旅。
今はその二つを宿した幼子らしからぬ子供が、そしていつか国を覆っていくのだろうか。
「エン」
コウがエンを呼びかけた。
「ああ。大丈夫だ」
エンは砂漠を照らす月を見上げ、そして星を探した。
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