レミリアの一夜物語
レシェフのサソリ狩りはだいたい1時間くらい続く。
空がまず白み始める。星の瞬きを見つけると、レシェフは狩りを終えた。
ネイトはさすがに砂漠での歩行にも慣れ、ラクダに乗らなくても砂の道を歩けるようになっていた。
なぜだか、無性に歌いたくなった。
貴族たちを喜ばせたわけのわからない歌ではなく、なぜか知っている暖かな歌を。
ざっ……と脳裏に緋色のものがちらついた。
大きな、緋色の何か。
覚えていないほど昔のこと、見上げていたそれは、今はどの目線で見ることができるのだろう。
頭の中に繰り返し流れるそのメロディに乗せて、ネイトは歌いだした。
夕焼けが西の空ににじむ。
最初くすんだ砂嵐に阻まれていた緋色のイメージは刻々とはっきりしてきた。
レシェフはネイトをちら、と見ただけですぐに前を向いてしまった。
ネイトはその態度が、許しだと知っていた。歌うことは、構わない。
ネイトは感情の赴くままひたすら歌った。
繰り返し、繰り返し。自分の中で何かが熱く火照るのを感じる。それが徐々に形を持って大きく拡がっていくのがわかる。
緋色のそれがはっきりとした形を持った。
それは、砂漠の熱をはらんだ、竜だった。
そしてそれは、今まさにネイトたちの行く手を阻むように佇んでいた。
「時は、充ちました……」
その優しい声が誰から発せられたのか、ネイトは一瞬わからなかった。
「ネイト」
緋竜がネイトの名を呼んだ。
すると、突然現れた竜にそれまで唖然としていたレシェフが腰のサーベルを抜いて、ネイトを緋竜から隠すように移動した。
しかし緋竜はそれを気にも留めず言葉を続けた。
「かつての予言通りに、あなたを我が一族の花嫁として、迎え入れたいと思います」
空がまず白み始める。星の瞬きを見つけると、レシェフは狩りを終えた。
ネイトはさすがに砂漠での歩行にも慣れ、ラクダに乗らなくても砂の道を歩けるようになっていた。
なぜだか、無性に歌いたくなった。
貴族たちを喜ばせたわけのわからない歌ではなく、なぜか知っている暖かな歌を。
ざっ……と脳裏に緋色のものがちらついた。
大きな、緋色の何か。
覚えていないほど昔のこと、見上げていたそれは、今はどの目線で見ることができるのだろう。
頭の中に繰り返し流れるそのメロディに乗せて、ネイトは歌いだした。
夕焼けが西の空ににじむ。
最初くすんだ砂嵐に阻まれていた緋色のイメージは刻々とはっきりしてきた。
レシェフはネイトをちら、と見ただけですぐに前を向いてしまった。
ネイトはその態度が、許しだと知っていた。歌うことは、構わない。
ネイトは感情の赴くままひたすら歌った。
繰り返し、繰り返し。自分の中で何かが熱く火照るのを感じる。それが徐々に形を持って大きく拡がっていくのがわかる。
緋色のそれがはっきりとした形を持った。
それは、砂漠の熱をはらんだ、竜だった。
そしてそれは、今まさにネイトたちの行く手を阻むように佇んでいた。
「時は、充ちました……」
その優しい声が誰から発せられたのか、ネイトは一瞬わからなかった。
「ネイト」
緋竜がネイトの名を呼んだ。
すると、突然現れた竜にそれまで唖然としていたレシェフが腰のサーベルを抜いて、ネイトを緋竜から隠すように移動した。
しかし緋竜はそれを気にも留めず言葉を続けた。
「かつての予言通りに、あなたを我が一族の花嫁として、迎え入れたいと思います」