レミリアの一夜物語
熱と光が収まって、レシェフが2人の元へ駆けつけたとき、2人は青白い顔になって死んでいた。
兄は娘を守るように抱きしめていて、兄の娘はすがるように父親の首に腕を回していた。
自らの魔力に呑まれて死んだ魔道種と、不幸な事故に巻き込まれた一般人を弔う祭儀が終わると、レシェフは神殿を出て行った。
そして兄が大事に持っていたいくつかのものを持って聖都を出た。ずっと砂漠を歩き通し、聖都から遠く離れた名前もないような小さなオアシスで暮らしはじめた。
家をもらい、オアシスでの生き方を学び、仕事を見つけ、3年ただ生きるためだけに生きていた。
夕方になる前には砂漠を出て、サソリを狩り、帰るときは夕焼けを見ながら帰る。
夕焼けが鮮やかな時に振り返ると、決まってそこの空はまだ星がほとんど輝くことのない深い藍色だった。
それはからっぽを、消えたものを感じさせる透明な空洞だった。
レシェフは帰るとき、振り返らなくなった。
できるだけ空を見ないように俯いてラクダを牽いた。
そうして見つけた。
砂漠に半ば埋もれるようにして浅い呼吸を繰り返す少女を。
その少女が目を覚ましたとき、いつの間にか遠くなっていた記憶が掘り起こされた。
ただ、少女の瞳は静かさが漂っていて、あの時見た、煮えたぎるような苦しみの色はなかった。
「私はネイト。……貴方は誰?」
その声は、兄と一緒に死んだ、兄の娘と少し似ていた。
そういえば、もし生きていればこれくらいの年頃だろう、と思った。
兄は娘を守るように抱きしめていて、兄の娘はすがるように父親の首に腕を回していた。
自らの魔力に呑まれて死んだ魔道種と、不幸な事故に巻き込まれた一般人を弔う祭儀が終わると、レシェフは神殿を出て行った。
そして兄が大事に持っていたいくつかのものを持って聖都を出た。ずっと砂漠を歩き通し、聖都から遠く離れた名前もないような小さなオアシスで暮らしはじめた。
家をもらい、オアシスでの生き方を学び、仕事を見つけ、3年ただ生きるためだけに生きていた。
夕方になる前には砂漠を出て、サソリを狩り、帰るときは夕焼けを見ながら帰る。
夕焼けが鮮やかな時に振り返ると、決まってそこの空はまだ星がほとんど輝くことのない深い藍色だった。
それはからっぽを、消えたものを感じさせる透明な空洞だった。
レシェフは帰るとき、振り返らなくなった。
できるだけ空を見ないように俯いてラクダを牽いた。
そうして見つけた。
砂漠に半ば埋もれるようにして浅い呼吸を繰り返す少女を。
その少女が目を覚ましたとき、いつの間にか遠くなっていた記憶が掘り起こされた。
ただ、少女の瞳は静かさが漂っていて、あの時見た、煮えたぎるような苦しみの色はなかった。
「私はネイト。……貴方は誰?」
その声は、兄と一緒に死んだ、兄の娘と少し似ていた。
そういえば、もし生きていればこれくらいの年頃だろう、と思った。